どうやら、保健所はこの会議を開いたという既成事実が欲しかったようだ。
医療機関、行政、関係団体の立場や意見は全くと言って良いほど異なるのに、
事前の意見調整はなく、かといって議論をする時間はほとんどなかった。
ただの報告会に終わり、保健所が提示した要件を事後承諾する会議に過ぎなかった。
2年前から存在する問題は、何一つと言ってよいほど解決されていない・・・。
保険者間で受診勧奨レベルが違うのに、予防対策を統一できないのは自明であろう。
HbA1c 5.2-5.5%、FBS 100-109mg/dLのグループに受診勧奨を行い、
医療機関を受診した場合、診療所できるのは200点のOGTTくらいで、
医師の指導は無報酬の上、他の診療がお座なりになるので、満足な指導はできない。
このグループに医師がインスリン分泌能を検査し、指導して、900点を請求しても、
査定して、200点にするか最悪0点にするのは、受診勧奨した当の保健者なのだ。
診療所の医師に「正常だから来なくて良いよと言うな」とは、虫がよすぎるだろう。
必要なインスリン分泌能を調べる検査をすれば査定して赤字をおしつけ、
他の診療を犠牲にして無償で指導しろと言っているのが分からないのだろうか?
係りが違うと言うだろうが、保健という小さいくくりでも縦割りの弊害がある。
受診勧奨をして、医師が正常と言えば、予備軍レベルには逆効果になるのは予想できる。
このようなことを見据えて、診療所のコメディカルに指導させるべく、
天草糖尿病ネットワークセミナーを開催し、コメディカルを教育しているのだが・・・。
漸く1年が経過したが、まだ完全に指導を任せるレベルには達していないだろう。
無料講座も準備しているが、利用者が少ない。
診療所のコメディカルが指導できないことに関しては、市町が指導をすべきだと思う。
一方、協会けんぽはHbA1c 6.1%以上、FBS 126mg/dL以上のグループに受診勧奨を行うが、
これは糖尿病型なので当然であり、糖尿病の発症予防とは違うようだ。
発症予防という点では、国保のレベルで予防教育を行うのが理想的だと思う。
それを実践しているのが上天草市であり、今後よい成績が期待できると思われる。
上天草市は予算がとれたが、予算のない天草市で、どうするか?
受診勧奨レベルをHbA1c5.6以上のグループに引き上げるのも一計かと思う。
協会けんぽにも少し譲歩して貰って、天草圏域で受診勧奨レベルの標準化を行えば、
全国的にもモデルケースになり得ると思うのだが・・・。
そもそも今回の会議では、上記のオレンジの部分、一次予防と二次予防について、
別々に天草圏域の現状と、具体的プランを話し合うべきであったが、
一次予防に関しては上記のように意見調整が全くなされておらず、
当日検証できるはずもない程の資料は事前配布されず、
二次予防に関しては、、天草で何が進んでいるかを保健所が理解していないため、
地域連携に至っては熊本県全体の説明に終始した。
歯科医師会もいたのだから、歯周病や歯科との連携にも触れればよかったのに・・・。
上記は、特定健診が始まる前の2006年頃から健診をベースにして、
行政や医師会に説明して回った地域連携イメージである。
要治療の部分に関してはほぼ予定通り達成できた。
要指導の部分の専門的食事指導の部分とかかりつけ医の関係は、
天草市が合併する前の保健師さんにも、お願いしたが、
なかなか達成できていない。
当初は市町は特定健診受診率の目標達成に積極的でなく、
5年間で徐々に目標に到達すればよい程度に考えており、
特定健診の受診勧奨後の対策については、今でもやる気がない。
この会議に担当課長すら一回も出席したことがないのがその証拠だろう。
天草圏域の糖尿病対策を決定する会議なら、局長でも偉すぎはしない。
今回の会議でも、天草市による指導は難しいとの解答だった。
これは2005年頃から使っている、糖尿病対策の全体像である。
今ひとつうまくいっていなかったり、現状を把握できていないのが、
健康人〜境界型の部分の対策の柱と事業の進行状況である。
糖尿病患者に関しては、連携体制は順調に整備されつつあると思う。
現在我々が、もっとも力を入れているのは、基盤作りのうちの、
「スタッフの資質向上」と「職域間の連携体制」の整備である。
これが天草糖尿病ネットワークセミナーを開催している理由であり、
天草生活習慣病研究会ワークショップを薬剤師会と共催している理由だ。
私たち糖尿病療養指導委員会の考えはこの3枚のスライドで全て説明でき、
これに沿って、いろんな事業を展開していることを理解していただきたい。
天草で順調に進んできた糖尿病対策がここ1年半ほど頓挫しているのは、
非常に残念である。